高田崇史「古事記異聞 オロチの郷、奥出雲」を読んだ感想。







QEDで有名な高田崇史さんの新シリーズ「古事記異聞」の第二弾が発売されていました。

前作の記事はこちら。



高田崇史「古事記異聞―鬼棲む国、出雲」を読んだ感想。
https://40saiguraino.blogspot.com/2018/07/blog-post_4.html
40歳ぐらいの雑談系日記




「なぜ日本神話には「櫛」が頻繁に登場するのか?」



「櫛」の謎を追って、出雲から「奥」出雲へ向かった橘樹。前作の続きが気になります!




大学の研究室で民俗学を学ぶ橘樹雅は、出雲での調査を終えようとしていた。ところが「出雲の本質は奥出雲にある」という担当教官のひと言で、日程を延長して奥出雲へ向かうことに。素戔嗚尊とは何者なのか?「櫛御気野命」「櫛名田比売」など神の名前に頻出する「櫛」の意味とは?同日、亀嵩近くで起きていた殺人事件。その本質を雅が見極めるとき、「櫛」の謎も明らかに。敗者の歴史が蘇る! (Amazon内容紹介より)






「ひな流し」

3月3日の「雛祭り」は「雛流し」。

穢れを「形代」―身代わりとなってくれる雛人形に遷して流し、無病息災を願う行事?


「夷流し」という行為から始まった。

夷=鄙(ひな)

「サネモリ送り」や「虫送り」もこの変形。






「三鬼神」

「三尊神」は同時に「三鬼神」である。

素戔嗚尊と月読神に加えて、天照大神も?

天照大神は日本を代表する怨霊神の一柱である。




「出雲風土記」の謎。

「出雲国風土記」には、「記紀」に見られるような、八岐大蛇退治という一大スペクタクルは書き記されていない。

どうして?

「出雲国風土記」にはもっと大きな謎が隠されている?





「須賀」と「八雲立つ」

八岐大蛇を退治した素戔嗚尊は、奇稲田姫を伴って新居を求め、須賀の地に移った。

「この地は、気分が清々しい。」

→須賀神社


「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」

これが本当に、奇稲田姫という新妻を新居に住まわせるための歌?

新妻のための新居に、妻を籠らせる?

これが本当に清々しい歌?




「稲」と「鋳」

奇稲田姫の「稲」は「鋳(いな)」で、田んぼの神様ではなく、鉄の神様。

京都の伏見稲荷も本当は「鋳」で鉄?




いざ、奥出雲を探索。

橘樹が1日で奥出雲をまわります。その足跡を紹介。。。

後半はかなりの駆け足です(笑)。



金子屋神社と金子屋神話民族館

主祭神:金山彦命と金山媛命

タタラ製鉄に従事していた人々の守護神



金伊賀多気神社

主祭神:素戔嗚尊と、その御子神である五十猛命。

相殿には、大己貴命と仁徳天皇(大鷦鷯命おおさざき)と、なぜか素戔嗚と天照大神との間の御子神で「八王子」の一柱である熊野櫲樟日命。

どうして、仁徳天皇と熊野櫲樟日命?



鬼神神社

主祭神:素戔嗚尊と五十猛命。

素戔嗚尊と五十猛命、最初は一人だったとしても、いつしか個人の名称ではなく、その一族の神々をも含むようになったと考えてよい。

(これ、いつの時代の歴史にも適用できる解釈ですね。)



稲田神社

祭神:奇稲田姫(単独)

江戸時代の設立。




奥出雲たたらと刀剣館

「地団太を踏む」

「かわりばんこ」



「案山子」も「タタラ」に関連している?






素戔嗚尊が八岐大蛇を退治して、尾から取り出し、姉の天照大神に献上した「草薙の剣」(三種の神器)は「銅剣」であると言われている。

これはつまり、この地の先住民である出雲族(八岐大蛇)は銅器を使用していたこと。

これを大和朝廷の先兵(素戔嗚尊)が先進の優れた鉄の武器を用いて退治して、出雲族を平定したと考えるならば、これがタタラ製鉄の重要なポイントとなった。

なお、素戔嗚尊と父のイザナギが用いた十握剣(トツカノツルギ)は、「鉄剣」と言われている。



八岐大蛇退治は、素戔嗚尊による出雲族の退治、と考えられる。

しかし、出雲では、素戔嗚尊や奇稲田姫、そして五十猛命をあらゆる場所で丁寧に祭っている。

なぜ?






三澤神社

主祭神:阿遲須枳高日子根命(大国主命と宗像三女神の一柱・多紀理毘売命との間の御子)




八重垣神社

主祭神:奇稲田姫




木次神社

主祭神:大己貴命、武甕槌命





佐世神社

主祭神:素戔嗚尊と奇稲田姫




八本杉

素戔嗚尊は八岐大蛇を退治し、再び生き返って、人々に危害を与えないようにと、八つの頭を埋めて、その上に杉を植えた。これが八本杉の起源。


「我たのむ人を恵みの杉植えて、八重垣かこみ守る末の代」


しかし、実際にこの場に来てみると、八重垣が低い?なぜ?






斐伊神社

主祭神:素戔嗚尊、奇稲田姫、伊都之尾羽張命


埼玉県の「氷川」神社は、「斐伊川」からきているに違いない。



「亀太夫神事」

前巻のおさらい。

出雲大社(大国主命)より熊野大社(素戔嗚尊)のほうが、圧倒的に上位にいるということを世間に知らしめるための神事。

それほど出雲では素戔嗚尊の力が強い。




「弁慶」

出雲で鍛冶をしていた叔父の長刀のエピソードがある。

弁慶は出雲にいられなくなり、京都へ旅立つ。






「斐伊」は、鉄の古語を表す「サヒ」からきている。

  • 「サ」や「ヒ」のつく地名。
  • また「鍛治」がもとになっている「カジ」。
  • 「吹く」の「フク」。
  • 水銀を表す青からきている「アオ」。
  • 白銀の「シロ」。
  • 鉄錆の「アカ」。


これらは全て「鉄」関係の地名。






「青丹よし 奈良の都は 咲く花の 匂うがごとく 今盛りなり」



靑・・・鉄

丹・・・水銀

咲く花(木花之佐久夜毘売)・・・鉄を鍛える際に飛び散る、特大の線香花火のような火花



鉄=>出雲や吉備

水銀=>伊勢


朝廷が、出雲や吉備、伊勢を手に入れた、という歌。








河邊神社

祭神:奇稲田姫




三屋神社

主祭神:大己貴命




八口神社

主祭神:素戔嗚尊








「八頭」=「谷(やと)」


そして、ここからは、研究室の先輩方と電話を何度か繰り返して、謎を解明していく、という前回と同じパターン。

難しい「漢字」とかも、よくもまあ電話で話を進めることができるものですね。関心です(笑)。


ちなみに、相変わらず、先生は不在です。いつ登場するのでしょうか??




八頭=「谷(やと)」


谷神=夜刀の神(得体の知れない蛇神)



そして、一番最初にまわった、金屋子神が登場。  

  1. 金屋子神は女の人が嫌い
  2. 藤は好きだけど麻は嫌い
  3. 人間の死体が好き



1.金屋子神は女の人が嫌い。

女性は穢れているから?

違う。「穢れ」思想は日本に仏教が入ってきた六世紀以降。


金屋子神は製鉄神。

「金屋」「子」



「金屋子神」は女神、おそらく木花之佐久夜姫。


蹈鞴場の人々に女性を近寄らせないため。

女性は男性の仕事の妨げになる。




2.藤は好きだけど麻は嫌い。

建御名方神「藤の枝」

鉄穴流しの際に使われた敷物。


3.人間の死体が好き。

岡山県の吉備津神社、鳴釜神事。

退治された鬼の首が埋められた、その上に釜が置かれる。

死体を火に投げ込むことによって、遺体に含まれているリン酸カルシウムが火の温度を調整する。





「オロチ」。

初花=人間の女性でいう初潮。

製鉄の過程は女性の生理と同一視された。



炉―女神の名前にもあるように「ホト」、つまり火処(ほど)は女陰、子宮。

初花である「ノロ」が排出されることによって見事な粉宝―子宝が生まれる。

その際には悪露もでる、なぜならばそこは谷(やと)だから。



それらすべての過程を、オロチが見守った。

オロチがたくさんいる→「八」。


それだけではない。

末広がりでおめでたいと考えられているが、八は不吉。

末広がりならば、やがて分かれてバラバラになる。

また、「八」の大字の「捌」は、バラバラにするという意味。




「非」と「櫛」。

まだ解明できていない謎。

  • 素戔嗚尊と八岐大蛇。
  • 奇稲田姫と櫛。




竹・・・忌まれていた。

構造が筒状になっているため、蹈鞴の吹子として使用されたから、朝廷が嫌悪した。

つつ→星


夕づつ=金星=素戔嗚尊


櫛は(不吉とみなされていた)竹でつくられている。

不吉な呪物。




斐伊川の「斐」と、「櫛」と関係?


「斐」・・・美しい、明らか、麗しい

「櫛」・・・クシ、梳る


ただし、「斐」の声符は上部の「非」で、こちらは「非常」の「非」。

この文字はこれだけで「梳き櫛」を表している。


櫛の歯が魚の骨のように左右に並んでいる形で、古くは「非余(ひよ)」と呼ばれた。

もちろん、「非」は「背く、悪い、あらず」そして「正常ならざるものの意」。


「櫛」=「非」


だから、素戔嗚尊、奇稲田姫、饒速日命、天照大神にも、全て「櫛」の文字があてられた。

全員が朝廷に背く悪神だったから。







大国主命のもとを訪れた「幸魂奇魂」。

幸魂は人々に幸せを与え、奇魂は人々に奇跡を与えるので「櫛」と示される。

「幸」は今でこそ良い意味しかなくなっているが、もともとは「手枷(てかせ)」のこと。

ゆえに、罪人を捕らえることを「執」といい、また報復刑を加えることを「報」という。

だから、「幸」は「辛」と似ている。

「辛」は入れ墨に使う針のことで、罪という意味も持っている。



でも幸魂の幸はまた違う意味?

「裂」で、裂かれた魂。



幸魂奇魂は、奈良の三輪山に住まわれた、大物主神、つまり、櫛玉饒速日命。





櫛は非であり、なおかつ竹は不吉で忌まれるものだった。

ゆえに協力な呪力を持っていた。まさに「忌み櫛」だった。






案山子。

蛇を象徴するものを身に着け、山の神として祀っている。

「カカシ」の名称自体が既に蛇を表している。

一本足は蛇であり、蹈鞴の象徴。

そして笠姿は素戔嗚尊につながる。どちらも製鉄。



続く。

素戔嗚尊が登場するのは、神話の時代。

しかし、蹈鞴は5世紀ー最近では3世紀かもと言われている。

時代が違うのでは?


→「記紀」と「魏志倭人伝」を読めば、分かる?




「素戔嗚尊」と「箸」。

「古事記」では「この時、箸その河より流れ下りき。」。

「魏志倭人伝」では「食欲には豆(へんとう)を用い手食す」。これは3世紀頃。

→当時、「箸」はまだ存在していなかった。

 →素戔嗚尊が八岐大蛇を退治したのも、当然、(神代の時代ではなく)それ以降の年代となる。

卑弥呼の時代と重なるのではないか?




元出雲は、京都。

出雲風土記の謎、八雲立つの歌の意味。




感想。

前回から追っているテーマであった「櫛」に関して、作品中に「記紀載録神話に見える櫛の呪力について」という論文が登場します。

巻末の参考文献にも記載されていたので、調べてみたら、実際に発表されている論文のようで、内容を拝見することができます。

興味がありましたらぜひ一読を。



あと、同じく作品中でも登場していた吉野裕子さんの「蛇」も面白いです。






さて、「出雲」から「奥出雲」ときて、次回は「元出雲」のようです。

しかも、素戔嗚尊の例の歌「八雲立つ~」の真相が語られるようですので、期待です。


ところで、水野教授は、橘樹さんの記憶の中では頻繁に登場するのですが、今後、実際に登場する機会はあるのでしょうか?

そして、今回、引っ張りに引っ張った、例の学者さんは、一体、誰なのでしょうか?


「カンナ」や「神の時空」の後発シリーズと比較すると、「QED」に近い内容で、この新シリーズ「古事記異聞」は好きです。

こちらも長く続くシリーズとなることを期待しています。


おしまい。



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