高田崇史「古事記異聞―鬼棲む国、出雲」を読んだ感想。

QEDで有名な高田崇史氏の新作が発売されていました。

『古事記異聞――鬼棲む国、出雲』
講談社


なんと、新シリーズです。




日枝山王大学の民俗学研究室に所属する橘樹雅は、研究テーマ「出雲」についての見識のなさを担当教官・御子神伶二に指摘され、現地に旅立つ。出雲四大神とは何なのか、伊弉冉尊を偲ぶ「神在祭」とは? 雅が向かう黄泉比良坂では、髪を切られ、左眼に簪を突き立てられた巫女の遺体が発見される。知られざる歴史の真実を描く新シリーズ!(Amazonより)



「QED」、「毒草師」、「カンナ」、「神の時空」などに続く、長期シリーズになることを期待しています!


それでは、レビューというか、気になった事項を記録していきます。


神と髪

「髪」-「神」

「櫛」と「簪」(=神刺し?)



「古事記」

イザナギノミコトは、イザナミノミコトに会いに黄泉の国に行く。
少し待っていて欲しいと言われたが、扉を開けた。
イザナギノミコトは自分の髪に刺してあった櫛の歯を一本おって火をつけて辺りを見渡した。
そして、恐ろしい姿になっているイザナミノミコトをみつけた。



「出雲国四大神」

・出雲郡、杵築の大社・大国主命
・意宇郡、熊野の大社・熊野大神=スサノオ
・島根郡、佐太大神社・佐太大神
・意宇郡、野城の社・野城大神




「佐太神社」

旧暦10月の「神無月」には、日本全国の神々が出雲に集まる。
→出雲では「神在月」と呼ぶ。

その八百万の神々が参集される社のひとつが佐太神社といわれている。
佐太神社の裏手には、イザナミの陵墓があるという。

神在祭=人間界でいう法事のこと?

佐太神社の主祭神は、猿田彦大神といわれている。
猿田彦は伊勢の神だったはず?
なのになぜ出雲に?



「スサノオ」

「吾ここに来て、我が御心すがすがし」

「八雲立つ出雲八重垣 妻ごみに
  八重垣作る その八重垣を」


スサノヲはヤマタノオロチと戦う際に、姫を神聖な爪櫛に変えて角髪(みずら)ー自分の髪に刺し、勝利した。


スサノオは「"櫛"御気野命」
奇稲田姫は「"櫛"名田比売」



再び「佐太神社」

神在祭最後の神送りの日に小豆雑煮をお供えして、その後に皆でいただくという風習あり。

これを「神在餅(じんざい)」と呼び、これが転訛して「ぜんざい」とよばれるようになった。

「神送り」の際には、神様たちは「小さな木製の船」に乗って帰る。なぜ?

帰りそこなった神のために、「止神送」をする。
「早く帰ってくれ。」



出雲旅行スケジュール

全日程をここでまとめておきます。


一日目:

出雲大社(素鵞社)
大社の宝物殿
古代出雲歴史博物館
稲佐の浜から日御碕神社(日沈宮)
長浜神社
万九千神社



二日目:

田中社
佐太大社(母儀人基社、秘説四座)
和鋼博物館
能義神社(野美社)
黄泉平坂 
揖夜神社



三日目:

熊野大社
須我神社
神魂神社
八重垣神社(鏡の池)←最大の目的地


(そして、奥出雲へ。。。)








熊野大社の「格」

出雲風土記の時代では、出雲大社の社格は非常に低く、
出雲大社に比べて、熊野大社の社格は、現在言われている以上に高かった。

熊野大社、「亀太夫神事」。



「櫛」

「櫛って一体なんですか?」


京都・天橋立の籠(この)神社で、天皇家よりも更に長い歴史を持つ海部氏が奉斎している饒速日命の正式名称は?

→天照国照彦火明「櫛」玉饒速日尊(あまてるくにてるひこほあかりくしたまー)


奈良・三輪山の大物主神の正式名称は、倭大物主「櫛」甕魂命。


奈良には、「櫛」玉比売命神社があり、祭神は、「櫛」玉比売命・市杵嶋姫命・白山比売命という女神たちと、天照大神。


「櫛」玉比売命や、「櫛」玉比売と同体とも考えられている神武天皇の母神で、巫女といわれる玉依姫と、天照大神との関わり。


伊勢神宮に天皇の名代として奉仕する未婚の内親王、女王が「斎宮」として旅立つ際、
それを見送る天皇は、自ら「御櫛」を斎宮の髪に挿すのが慣習だった。



「櫛は呪物だった。」

「櫛」という文字のつく神々は、ほとんど怨霊。
怨霊を自分の味方にして、身につけて自らを護ろうとした。

しかし、彼らを身にまとうということは、同時に「あの世」へ旅立つことと等しかった。
天皇から斎宮に贈られた櫛は「別れの御櫛」と呼ばれた。
呪いであり、他の怨霊たちから斎宮を護るためのお守りだった。
そしてそれは別れの印だった。


「たまゆら」



能義神社

野美社、相撲の始祖、野見宿禰。→真実の主祭神



佐太神社と「ミサキ」

江戸時代の平田篤胤。

「サダ神」記紀に一度もでてこない。
潰されてしまうのを防ぐため、「サダ神=猿田彦大神」と言い、この神社を救った。


真実は、「ミサキ神」=怨霊神

朝廷側の神々の先に立って導き、その役目を終えると大抵は殺されてしまう。

佐太神社に集まってくる神々は、全員がなんらかの悲惨な運命を背負わされた神々だった。
そのため、怨霊神となってしまったイザナミの墓参にやってくる。
だからこそ、あの神社に集まった神々には、とにかく全員、還っていただかないといけない。
怨霊神のたまり場にならないように。




「出雲風土記の謎」

それは「時間」。

元明天皇が命じたのが713年。
総員36人にも人間が関与したにもかかわらず、実に20年もの歳月を要している。

「なぜこれほどまで「出雲風土記の編纂に時間が費やされたのか?」


「大国主命の国譲り神話と、八岐大蛇退治の伝説が、どこにも書かれていない」→二番目以降の謎




「案山子について」

出雲はスサノオだらけ。


「案山子」=「崩え彦」

古事記 「尽く天下の事を非れる神」

案山子にスサノオが準えられているからなのか?
案山子は製鉄民?


奥出雲へ出発。

・スサノオのオロチ退治の里
・クシナダヒメの手摩乳・足摩乳の故郷
・しかも、彼女が櫛となった地



おまけの考察


案山子=カカシ=スサノオ

話がすごく脱線しますが、少年ジャンプで連載していた漫画「NARUTO(ナルト)」に、天才忍者「はたけカカシ」というキャラが登場します。


カカシは左目に写輪眼を持ち、普段はこの左目を隠しているので、片目の風貌に見えます。
そう、まさに、カカシなんです。

しかも、このカカシは、物語の後半で、なんと両目に写輪眼を発現することで、最強の技である「スサノオ」まで発動できるようになりました。

「カカシ(片目)=スサノオ」

やばい!

岸本斉史先生は、ここまで考えて、カカシという名前を考えていたのでしょうかか?!


「NARUTO」岸本斉史





感想

基本的には、今までのシリーズと同じ構成(古代史の謎解きと殺人事件が別々に進み、最後に話が絡み合う、と。)で話が進みます。

そして、今までと同じく、殺人事件のほうは。。。。あまり期待しないほうがいいです。

ちなみに、今回の主役である橘樹雅さんは過去のシリーズと比較すると、普通の女の子に近い印象を持ちました。

出雲旅行に、恋愛要素をちょっと求めたり、など。


そうそう、「奥出雲ワイン」が当初から登場していましたが、「奥出雲」というキーワードを暗に示していたのでしょうか?

そして、今回のシリーズでは、各地の「ワイン」にフォーカスされていくのだとしたら、それはそれで面白いですね。

ただ、ネタがすごく限定されてしまうような。。。(笑)


-x-x-x-x-

「蛇」と「櫛」

今回は「蛇」というキーワードがよく登場していましたが、「櫛」との関係はあるのでしょうか?

ちなみに、蛇については、この本が面白いです。


蛇 (講談社学術文庫)
吉野 裕子





大国主命は蛇神だと言われているし、
カカシという言葉だって、蛇を意味する「カガ」からの変化だと思えば、蛇とも関係がありそう。

それに、カカシというイメージも、よくよく考えてみると、蛇そのものと思えなくもない。
うーん、でも「蛇」と「櫛」の関係は。。。。。?

三輪山神話。。。?



-x-x-x-x-

そういえば、「八雲」と「出雲」というキーワードで、ずいぶんと昔に読んだ少女漫画を思い出しました。
普段は全く少女漫画は読まず、読んだことのある少女漫画ってすごく少ないのですが、楽しめた漫画でした。


「八雲立つ」
樹なつみ




-x-x-x-x-

さて、本作ですが、珍しく尻切れトンボのように終わってしまいましたが、どうも次作が予定されているようです。


「櫛」の正体とは?


次回作では解明されるのでしょう。期待しています!




おしまい。


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