少し古い本ではあるが、"古代医術"という面白い観点からの昔話論ということで、読んでみた。
日本昔話と古代医術
槙 佐知子 (著)
東京書籍 (1989/06)
この本には、桃太郎、瓜子姫、一寸法師、舌切り雀、カチカチ山、猿蟹合戦、花咲爺、瘤取り爺、浦島太郎、かぐや姫、といった有名どころの昔話がのっている。
一番興味をもったのは、「一寸法師」だったので、まとめてみたい。
現代版とはいろいろな点が異なる。
たしかに、"播磨"(現在の兵庫の一部)は古事記でも"針間"だ。針磨という職業の人が多数住んでいたのだろうか。
また、三輪山伝説も「針」を使った退治として紹介されている。そして....針以外にも.....
つまり、「米」というのは当時は非常に貴重で、かつ"お払い"用の神聖な米を管理・保管していたということから、一寸法師が陰陽道や祭祀に関るような仕事をしていたと推測している。そして、一寸法師の「針」の意味を、針に秘められた呪力と、鍼による病気治療、だろうとまとめている。
"鍼灸師"といっても、陰陽道と深く関わっていた、ということだろう。
ここからは想像だが、原因不明の病気を、鍼灸師の一寸法師が治した。そして、そのお礼に、「なにか」をもらったのだ。
ここまでくると面白い。「鬼遣方」を打ち出の小槌に見立てている。先の想像の続きだが、病気を治したお礼に、お腹いっぱいの食べ物、そして財宝、さらに、秘密の技で、性の問題も解決してもらった、と、すっ~と考えられる。
現代版の立身出世的な綺麗な話とは違い、とてもドロドロしているがどこか人間らしい(それでもあまり好きにはなれないが)御伽草子版の一寸法師について、古代医術を絡めて読んでみると、また少しは違った印象を持つ。
最後に、「日本昔話と古代医術」は現在は新品での入手が難しいと思われる。このような本が手に入りにくくなってしまうことは非常にもったいないと思う。(このような本こそ、紙版は難しいとしても電子版を検討することはできないのだろうか?)
日本昔話と古代医術
槙 佐知子 (著)
東京書籍 (1989/06)
この本には、桃太郎、瓜子姫、一寸法師、舌切り雀、カチカチ山、猿蟹合戦、花咲爺、瘤取り爺、浦島太郎、かぐや姫、といった有名どころの昔話がのっている。
一番興味をもったのは、「一寸法師」だったので、まとめてみたい。
「住みなれし難波の浦を立ち出でて都へ急ぐわが心かな」
一寸法師のおさらい
本の内容にいく前に、一寸法師の物語についておさらいしておきたい。
「現代版」一寸法師
現代版はだいたいこんな話だ。- 子供に恵まれない老夫婦が、子供を欲しいと住吉の神様に祈り、子供ができた。
- しかし産まれた子供はとても小さくて、また何年たっても大きくなることもなかった。
- しばらくして、一寸法師は武士になるために京に行きたいと言い、お椀を船、箸を梶、針を刀、として、京に向かった。
- 京に着き、三条の大臣の屋敷の門をたたき、仕官を願った。
- ある日、大臣の娘のお供で観音様にお参りに行くが、道中で、鬼が娘をさらおうとした。
- 一寸法師は鬼から娘を守ろうとするが、鬼に飲まれてしまう。
- 飲まれた一寸法師は鬼のおなかの中で針の刀をさしまくり、痛がった鬼は一寸法師をはきだした。
- 鬼はもう乱暴なことはしないと誓い逃げて言った。
- 娘は、鬼が落としていった打ち出の小槌をふると、一寸法師が大きくなった。
- また打ち出の小槌をふると、金銀財宝がでてきて、娘と一寸法師は幸せに暮らした。
「御伽草子版」一寸法師
現代版とはいろいろな点が異なる。
- 一寸法師が一向に大きくならないので、老夫婦は気味悪がって、どこかに追い出そうと思っていた。それを察した一寸法師は、追い出される前に自分から家を出た。
- 一寸法師は娘に一目惚れして、なんとかして自分の妻にしたいと策略を練る。
- 米粒を寝ている娘の口につけて、娘が奪ったと大臣(宰相殿)に嘘をついた。娘は勘当され、一寸法師は処置を任せられたため、一緒に家をでた。
- 船に乗り、故郷に向かう途中、不思議な島にたどり着いたところ、鬼が二匹でてきた。一寸法師は鬼に飲み込まれるが、鬼の目から外にでる。何度か繰り返すと、鬼は恐れおののいて、打ち出の小槌を置いて逃げていってしまった。
- 打ち出の小槌で飯をだして空腹を満たし、背丈も大きくなり、また豪華な食べ物、金銀財宝を得る。
- 帝は一寸法師を気に入り、老夫婦が由緒正しい血筋であったため、中納言まで出世した。また3人の子供にも恵まれた。
- それもこれも、住吉大明神に祈願して産まれた子供であるからなのだ、という結び。
お椀の舟とは
まず、「医心方」に「三尸(さんし)」を取り除く儀式に"箱" が使われていた話が紹介されている。「三尸」とは、例の「庚申信仰」の三尸である。 そして、この風習が、川に流す「流しびな」の風習として日本に定着したものとし、一寸法師を"流した"、としている。つまりは、お椀の舟=棺、という解釈であろう。針の意味するもの
針は古代から使われ、骨、石、青銅などでも作られた。縫針や留針、釣針のほか、鍼灸師がツボを刺して治療するのに使う鍼もある。針は一本一本磨って作ったりで、針磨という職業があり、播磨国の国名は針を名産とするところからきたという。
たしかに、"播磨"(現在の兵庫の一部)は古事記でも"針間"だ。針磨という職業の人が多数住んでいたのだろうか。
また、三輪山伝説も「針」を使った退治として紹介されている。そして....針以外にも.....
また「御伽草子」の一寸法師は、姫君に心を奪われ、姫を手に入れるために姫を無実の罪におとしいれ、館を追い出されるように仕向ける。
「打ち撒き」使用のために一寸法師が管理していた米を、姫君が盗み食いしたと申し立てたのだ。
つまり、「米」というのは当時は非常に貴重で、かつ"お払い"用の神聖な米を管理・保管していたということから、一寸法師が陰陽道や祭祀に関るような仕事をしていたと推測している。そして、一寸法師の「針」の意味を、針に秘められた呪力と、鍼による病気治療、だろうとまとめている。
"鍼灸師"といっても、陰陽道と深く関わっていた、ということだろう。
また、一寸"童子"ではなく一寸"法師"という文字の通り、広い意味で"僧"に関連していたとみてよいと思う。
鬼退治
鬼が取り付いて人を病気にする、という古代の考え方をもとにして、鬼に取り憑かれてしまった人の病気を治したのではないか、と述べている。古代中国の病名「鬼撃病」は、原因不明の激痛をともなう病気のことである。鬼の持ち物に杖や笞があるのは、それで打たれたために鬼撃病となるという理論をふまえているのだろう。
ここからは想像だが、原因不明の病気を、鍼灸師の一寸法師が治した。そして、そのお礼に、「なにか」をもらったのだ。
「医心方」には、「鬼遣方」の中の房内術が収められていることも、ここで重大な意味をもつ。房内術の中には、男性の性器を巨大にしたり、精力増強する術もあるからだ。つまり、この場合、「一寸法師」は人体の一部の象徴として描かれているともいえるのだ。
ここまでくると面白い。「鬼遣方」を打ち出の小槌に見立てている。先の想像の続きだが、病気を治したお礼に、お腹いっぱいの食べ物、そして財宝、さらに、秘密の技で、性の問題も解決してもらった、と、すっ~と考えられる。
現代版の立身出世的な綺麗な話とは違い、とてもドロドロしているがどこか人間らしい(それでもあまり好きにはなれないが)御伽草子版の一寸法師について、古代医術を絡めて読んでみると、また少しは違った印象を持つ。
最後に、「日本昔話と古代医術」は現在は新品での入手が難しいと思われる。このような本が手に入りにくくなってしまうことは非常にもったいないと思う。(このような本こそ、紙版は難しいとしても電子版を検討することはできないのだろうか?)
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